『Live under the sky 』以来、日本では23年振りの野外フェス出演となるメセニーの来日直前インタビュー!

ー 野外フェスティバルへの出演は23年振りですね。

 そう、確かにそのとおりで、ライヴ・アンダー・ザ・スカイ(※)以来ということになるね。あの頃の良い思い出があるから、日本で、また野外で演奏するこのフェスティバルのオファーを受けることにしたんだ。しかも非常に特殊なことをやるのでとてもワクワクしているよ。お見せするのは、私が今までに参加してきたどれともまったく似つかないもの、ブルーノート東京オールスター・ジャズ・オーケストラとの共演、だからね。
※ライヴ・アンダー・ザ・スカイ…1977年〜1992年にかけて毎年夏(7月)に催されていた日本のジャズフェスティバル。

ー 過去、日本で出演した野外フェスティバルでの思い出を聞かせてください。

 様々なバンドを連れて日本へ行き共演したよ、実に興味深い数年だったね。中でも覚えているのが、私のグループとサン・ラ・アーケストラの共演。彼らは全員、暑い日本の夏にも関わらず宇宙服に身を包んでいたよ。マイルス・デイヴィスと何度も共演したこともある。マイルスとはいつだって特別なものだった。

 

↓1992年(23年前)に出演したライヴ・アンダー・ザ・スカイでの模様

 

ー 日本の国民的アニメ番組『ジョジョの奇妙な冒険』のエンディングテーマで「Last Train Home」が使用され話題になっています。あなたの音楽性は音楽ファンの域を超えて、若年層含め日本のカルチャーに受け入れられました。緻密な音楽、メロディアスな旋律等、ご自身で分析していただけますか。

 音楽のハーモニーやリズムを分析したり分解したりするのは簡単なことだ。しかし何が良いメロディを作るのか、を説明するのはほぼ不可能。ミュージシャンたちの中でもその「何が」はレアなことで、最近のプレイヤーたちを見渡しても、気の利いたコードや変拍子で超複雑なアレンジなど、小難しいプレイをする人を見つけるのはけっこう簡単だが、本当にクオリティの高いメロディ、豊かな旋律を繰り出せる人はいないと感じている。それは私の好きな音楽やミュージシャンたち、バッハからウェス・モンゴメリー、レスター・ヤングや、コルトレーンでさえもが必ず備えていたクオリティなのに。複雑だが、何かしらメロディアスな核がある、という。

 私にとって音楽を書くことは即興と似ているが、冷静にみている部分もある。他の音楽のファンの立ち場で考え、私が求めているメロディへの衝動を満たしていきたい、そして、できることならそれを自分自身の作品の中で実現させようと試みている。「Last Train Home」は皮肉なことに即興が非常に難しい曲ではあるが、それは本質なのかもしれない。あのメロディに見合ったソロを弾けるようになるまで何年もかかったよ…つまり、逆から始まることもあるということだね。

 

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ー 新作、エバーハルト・ウェーバーのトリビュート作品『オマージュ』について、フェスではどいった形で演奏されますか。

 非常に特別なものだから、あの音楽を日本で披露することができて本当に幸せだよ。エバーハルト・ウェーバーは私にとって特別な人物。初めて聴いた時から、彼の音楽と演奏の大ファンになった私が、自分の音楽キャリアがまだ浅い頃からバンドスタンドやレコーディングスタジオでかなりの時間を共に過ごすことができたということは、私にとってとても重要なことだ。70年代の頭にはお互いゲイリー・バートンと共演し、その後、いくつかレコードも一緒に作っている。

 音楽の可能性について先見の明を持っていた人物そのもの、という気がする。しかも、唯一無二の。それがよく表れているのが彼が造った楽器であり、そこから宙に送り出されたあのサウンドは音の指紋の結晶となって、これだけ年月を経た今もなお、当時初めて聴いた時と変わらぬ独特な個性と新鮮味を保ち続けている。

 彼の素晴らしきミュージシャン人生を讃える特別なイベントが2015年1月にドイツで催されることになって、私も参加を依頼されていた。この実に独創的なミュージシャンのために何か特別なものを創り出そう、と私は考えた。2005年に脳卒中を患って以来、演奏はできずにいる。しかし、彼の音の独自性は彼の作品の構成要素としてあまりにも大きいと私は感じていたので、何かしら自分にできる形でそれを認知させたかった。

 そして思いついたのが、サンプリングを一歩先に推し進めてみたら面白いのではないか、ということだった。彼が即興演奏している映像を見つけて、それを編集し、切り張りしてその演奏のオーケストラ部分と合わせ、新たな作品として彼の姿を大型スクリーンいっぱいに映し出し、その前で我々が演奏することにしよう、と。それは私にとって、映像サンプリングの形を借りることにも近い、新たな作曲方法に思えたんだ。

 今回は私がエバーハルト・ウェーバーのために書いた曲を、彼の初期のソロ演奏の映像から私が作ったフィルムをスクリーンに映し出しながら披露する予定だ。その前でブルーノート東京オールスター・ジャズ・オーケストラが、エバーハルト・ウェーバーのベースを交えて演奏する。

 

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★EPKも公開されました!

『オマージュ』
(ユニバーサル ミュージック)
※9月11日(金)発売予定
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ー オーケストラとの共演の見どころを教えてください。

 私も興奮しているよ。今までやったことがないからね。エバーハルト・ウェーバーの曲以外は、エリック・ミヤシロ氏とブルーノート東京オールスター・ジャズ・オーケストラの手に委ねようと思ってるんだ。何を演奏するか、については私からいくつか提案をしたので、その楽曲を彼らが独自にアレンジしている。どうなるか、非常に興味深いね!

ー エリックミヤシロさんとは今回の公演について、どんなことを話してますか。

私からはとにかく、音楽を楽しんで、彼のバンドとミュージシャの強みをじゅうぶんに活かしてアレンジし、最善を尽くしてくれるよう激励したよ。

ー フェスを楽しみにしているファンに向けてメッセージをお願いします。

 日本の皆さんのために演奏することを、私はいつも心から楽しんでいます。ことさら誇りに思うのが、トリオから、いつものグループ、そしてブラッド・メルドーやハービー・ハンコックとの特別な企画に至るまで、長年の間にいくつも違った形態で演奏できていること。今回は私にとっても初めてとなる、日本でのビッグバンドとの共演です。一度限りの、いつもとは違うパフォーマンスになるでしょう。確信はあります。そして日本の皆さんに『オマージュ』をお届けするのが待ちきれません。